今週のアクエリオンに見たアニメ的演出の許容
姉さん。まさか今週のアクエリオンのわざと崩した絵演出について、
ここまで問題になったなんて思いもよらなかったんだ。
2005-08-14 追記を追記(変な日本語だな)
トンデモアニメ創聖のアクエリオン
■創聖のアクエリオン
ロボのパンチが敵を殴りつけたまま地上から月面にまで伸びて突き刺さったりするような
随所に散りばめられたトンデモ演出がウリの今期のアニメです。
その第19話「けがれなき悪戯」という話が今週放送さたのですが
今回の演出を巡って視聴者が大激論を繰り広げています。
■So-net blog:「創聖のアクエリオン」オフィシャルブログ:テレビ受像機の故障ではありません。(笑
HPを見てもらうとわかると思うのですが、結構綺麗な絵のアニメだったんですね。
それが逆に反発を招いたのかもしれませんが、
- 作画崩壊だ。こんな話を作るな
- 演出なのがわからないのか
という二派に別れて罵り合いに近いような言い争いを繰り広げています。
「敵側の攻撃で見た目が変になってしまう世界に迷い込んだ」というだけの話なので、
見た後では別段他の視聴者がどう思ったかなんて全く気にしていませんでした。
はてなダイアリーの何処かで、「普段の絵の方がよっぽどキモい」とか必死に煽っているのを見ても、
なぜ煽っているのかさっぱりわかりませんでしたが、まさかこんなにモメていようとは。
今回の争点
実際の違いを検証
演出が変わった直後。墜落した機体
本来こうなっている機体
次のシーンでは
男「アハハハハ!なんだお前そのカッコ!wブスがwホントブスになってるぞw」 女「あぁぁーっ!何?あんたのその顔!その格好!」
というやり取りがあり、自分の顔が崩れている所を見て驚くという演出があります。
その後も↓の動物が出てきて猫かどうかを一向は討論しています。
その後もずーっと崩れた絵が続くわけですが、
混乱した一行を眺めている敵。一向は崩れていますが、敵は普通の絵です。
いつもは美形でナルシストなキャラが、崩れてしまった自分の顔を隠して登場したのですが
被っていたフードを取られて素顔を見られてしまいうろたえるシーン。
現実側にいる他のキャラも随時場面が切り替わって登場します。
エロいと噂の名物合体シーンも崩れ顔(笑)
ロボ同士の戦闘シーン
戦闘シーン2
順番が違いますが、最後の方で敵の呪縛が解けた時のロボ
敵の呪縛を解いた直前直後のシーン。急に崩れからいつもの画風に切り替わります。
「使用前」「使用後」でいきます。
(前)(後)
(前)(後)
(前)(後)
最後に「崩れた世界に入る前に冒頭から作画が崩壊していた」とか言われている根拠となる時の美形の顔。
すぐ↑の金髪の事なので比べてみてください。
これだけでは判断が付かないという場合の参照。
□夜鯖の無職な日々
冒頭の金髪の崩れと、作画崩壊と言っている一連のシーンの描き方はあきらかに違うと思います。
それこそパッと見ただけでわかるほどに。しかも途中で何度も現実(普通の絵)に切り替わります。
「それも崩れている」との主張ですが、冒頭の美形の顔と崩れたシーンが同じようには見えません。
「明らかに」「顔が」「違ーう」
更に、崩れシーンに入ってすぐに
- みんなの見た目がおかしいとキャラが困惑する
- (漫画的手法では猫に見える)出てきた動物が猫なのかどうかわからない世界である
- 美形キャラもこの世界に入って顔が崩れた事を恥じている描写がある
- 呪縛を解く直前に画面全体が歪み、更に顔の形が酷くなる
という風に状況をフォローする演出も十分にあった訳です。
何故「演出」ではなく「作画崩壊」となったのか
いつもとは様子が違うという演出だったので、すんなりと「敵の攻撃なんだな」と思った身にとっては
作画崩壊だと騒がれている事はむしろ驚きでした。
演出だと気が付かない奴は餓鬼という事ではなく、明らかに「これはそういう演出だよ」という描写があったのに
どうしてこうも「作画崩壊」と騒がれているのか。本当に絵しか見ていないのか。
「作画崩壊」という神話
演出だとわからない。演出であっても気に入らない層が必ず口にする言葉
「作画崩壊」ですが、そもそもこれはなんなのでしょうか。
アニメをよく視聴している層にはよく見られる用語になりますが、
漢字を見れば意味が通じる程度の用語で一般的ではありません。
とある用語集にはこんな解説があります。
■作画崩壊[さくがほうかい]【感想】《一般》 (光希桃AnimeStation)
ある回の作画がキャラクターデザインと大きく違っており、
誰が誰だか分からないような作画になっている状態になっていること。
現在国産のアニメでは十分に準備がされて資金も投入され人員も整っていると
思われるようなアニメ以外はほぼ確実に作画崩壊は発生します。
19時代のアニメでも顔は崩れるので深夜にやっているアニメなら崩れて当たり前という環境です。
アニメ大国でも実情はそんなモンです。
だからこそ「作画崩壊」という用語がよく使われるわけですが。
そんな作画崩壊で一番有名なのはアニメ「ロストユニバース」の「ヤシガニ屠る」という回、
通称「ヤシガニ」です。作画が酷い様を指して「ヤシガニ」と言っただけで意味が通じるわけですが、
本来のヤシガニは絵が下手糞レベルではなく、素人でも考えたらわかるような絵の間違いや
まるでワープしているようなコマ数の少なさ故に伝説になった物です。
■ヤシガニ特集 (NYO-TEKI)
■ロスト・ユニバース 4話「ヤシガニ屠る」リテイクチェック (hetaredo)
■『ロスト・ユニバース』第4話は何故破綻したのか? (TVアニメ資料館)
そんな有名な事件もあって、作画崩壊という単語自体が一人歩きしているような印象を受けます。
作画崩壊過敏症というかなんというか。
今回の件も崩れた=作画崩壊と判断したようですが、確かに崩れ世界でも誰が誰の顔かはわかりませんが、
プールのシーンでわかるように、作画崩壊でも一応似せる努力はするわけです。
似せようとして頑張ったのがプールの顔、似せようとしていないのが崩れ世界の顔。
それにいつもロボ(アクエリオン)はCGで描かれています。
普段見ていたのなら、なんらかの違和感を持ってもおかしくないはずなんですが。
最近の作品はお行儀がよろしいので
今回の件は判断力の無さというよりは、何か別の原因があるのではないかと思ったりしたわけです。
敵の攻撃によって見た目が完全におかしくなる世界という事が
作画崩壊派にとっては想像できない世界だったんだろうな、という気がします。
考えてみると、どんな作品であれ最近はある一定の法則でもって決してそこからはみ出したりしません。
不条理は「この雰囲気、面白いだろう?」という計算ずくのギャグマンガの不条理*1でしか存在せず
夢落ちで収めるしかないような突拍子も無い演出というものは殆ど見かけません。
「なんでも作画崩壊病」はあったにせよ、そういった演出がある前例を一度も見た事がないと
すんなり演出に入り込むことができなかったのではないかと。
氷の属性の敵が出たら炎で対抗してみるとか、変身中は攻撃しないとか、
そういう類のお約束的な演出の一部だったのやもという事で。
わからないから作画崩壊という選択肢で判断するしかなかった。
はじめてアクエリオンを見るという人と一緒に見ていたんですが、
作画崩壊が酷いとかそういう間の抜けたコメントはしてなかったので
別にアクエリオンがどうこうじゃなく、そういった演出を見たことがあるかないかの差だろう、と。
わかった人も、監督もそういった演出を見たことがあったから想像できたのではないかと思うわけです。
「追記」というか「蛇足」?
ワンピース云々について書くのを忘れてました。
今回見られた「うつのみや理という人物はそういう演出だ」という主張がありましたが、
この点だけは個人的には承服しかねます。予備知識が必須というのは違うんじゃないかな、と。
作品内で説明できないから作品外で饒舌に語っちゃってるクリエイターなんか見たくも無いでしょう?
そういえば、前にもこんなことありましたよね。
■ブリュンヒルドマーチ ワンピース作画をけなしたら名無し大量乱入しちゃった時のログ
*1:今回の件はそんなに不条理な演出だとは思いませんでしたけどね