俺とおもちゃ屋とゲーム屋の話

絶滅危惧業種のおもちゃ屋とゲーム屋について大雑把にゲーム方面から

15年くらい前は中古を扱ってるゲーム屋巡りが日課だったんだけど最近ゲーム屋自体を見かけなくなった。
あるのはTSUTAYAとかGEOとかBOOKOFFとかの本業が別にあって中古も扱ってますよという店ばかり。
ゲームを探す時は秋葉原なりネット通販なりで買えるし、中古自体それほど買わなくなったので特に困ってはいないんだけど
今のゲーム好きな子供はどうしているんだろう?普通にDS持ってる子供も多いからゲームが下火になっているように見えないんだけど。


もしかしてゲーム屋はおろか今ネット使ってる世代でも、「おもちゃ屋」を見た事がないのもいるんだろうか?
自分の世代でも玩具屋自体がどんどん潰れ初めて来た頃で、「今時玩具屋なんてあるんだ」と感心する位になったから
玩具買う所は大型の量販店とかだけになっているのかもしれない。
あちこちの駅で生存確認したのも10年に近い程前だったし、何処の店主も高齢だったから今はもっと減ってそう。
自分とゲーム屋(含むおもちゃ屋)って事で残しておくと資料になりそうだから書いておこう。

ファミコンの登場以前にあった覚えている電子玩具について軽く

当時遊んだことあるのはこんなの

ゲームウォッチ*1

計算機ような黒1色だけ使う液晶のゲームウォッチ。ゲームしてない時は液晶の時計になるというのが"ウォッチ"部分。

ゲーム&ウオッチ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0&%E3%82%A6%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%81

YouTube - ドンキーコング ゲーム&ウォッチhttp://jp.youtube.com/watch?v=HkZIvbjeaYc&hl=ja

他のメーカーのもゲームウォッチとして扱われていた気がする。
初期型のはGBAmicroみたいな形でドンキーコングのような後期型の物はニンテンドーDSみたいな形だとか
後のゲーム機のスタンダードになる十字キーを採用とか、ゲームボーイにも移植とか色々あるけど略

LSIゲーム

ゲームウォッチLSIゲームに入るらしいんだけど、なんというかこういう薄青い背景が印象的な奴

TOMY LSIゲーム スクランブル
http://www.gradius2.com/index.php?UID=1157555060
TV接続系

ここにあるブロック崩しとか

任天堂の歴史
http://www.geocities.co.jp/Playtown/4007/phy05.html

任天堂と言えば花札、トランプからここら辺飛ばして一気にファミコンからという認識なので一応。
ここから本題。

おもちゃ屋がゲーム屋になるまで

都会からあまり移動しなかったのでもしかしたらこっちだけかもしれないけどまずおもちゃ屋から。
おもちゃ屋は玩具全般を取り扱っていて。ルービックキューブとかの知育っぽい玩具から
流行りの特撮のロボとかウルトラマンとかプラモデルとかを扱っている店という事で。
ただ、ここら辺の電源なし系のは今回は関係ないし専門外なので略。*2


前述のようなパターンが少なく単色のゲームウォッチか数色のLSIゲームしか見た事が無かったので
ファミコンが出た時はかなり衝撃的だったようで学校から帰ったら近所にあったおもちゃ屋でずーっとデモプレイを見ていた。
この店はこういった電源のあるゲームに力を入れていたのか、光速船とかSG-1000なんかも入荷していた*3

ALL ABOUT 光速船/Vectrex
http://vectrex.takuranke.com/

SG-1000の倉庫 / SEGA 8Bit 家庭用ゲーム機情報
http://www.geocities.jp/sg_souko/

こういった他のライバル的なゲーム機を幾つか出ていたもののファミコンと比べると性能が違い過ぎた

YouTube - Star Force ( スターフォース ) / SEGA SG-1000
http://jp.youtube.com/watch?v=tlsgMDJF5Fc&fmt=18

YouTube - Famicom Commercial - Star Force 1985


圧倒的な性能で他を押しのけて売れているファミコンが世間的にもブームになり、
他のTVゲームの代名詞として機能していく。ゲームと言えばTVゲームを指すようにもなっていく。
ゲーム関係の売り場の面積も増えておもちゃ屋の中核となっていったのが子供の目からもよくわかった。

おもちゃ屋の売れ行きの話

おもちゃ屋というのは親御さんの財布に依存している関係上毎日のように商品が売れるわけではない。
誕生日や子供にとっての何かの記念日におもちゃを買って上げるという家庭が多いはずだ。
中でも1年の売上の中でも大多数の売り上げを占めているのが年末のクリスマスらしい。
年明けのお年玉を奪い取るのも大きいだろうから年末年始が商売の要となるので
玩具業界一丸でクリスマスに向けて準備をし新しいロボを出してきたりする。
TVでの放映が終わってしまうゴミ同然になってしまう商品も多いのでこの時期に売り切らないといけないのだ。


中でも戦隊ヒーローものは放映が終わってしまった後には何の価値もない状態になる上に
新ロボ登場→クリスマスが終了したら2月に速攻で番組が終わってしまうという抜群のKYっぷりで
読み違えたおもちゃ屋の在庫を毎年圧迫していくのであった…


また、通常のそういった毎年売れるテレビ連動の商品の他にやたら売れる突発型の商品というのもあって
たまごっちや安定供給される前の遊戯王カードやベイブレード等の仕掛けが大ヒットした商品だ。
入荷後即完売御礼なので誕生日を待っていては売り切れてしまうのですぐに買いに来る。
おもちゃ屋も手を尽くして買い出しに走るが問屋が法外な卸値を提示してきたり
「ないよ」と言っておいてどうでもいい他の商品を大量に買い込んだら
実は今入荷しました」と言って在庫を出してくる等のドロドロした内幕が子供の知らない所であるわけで。


ゲームは発売日に買っている子供もかなり多かったので後者の方に近い売れ方をしていたと思う。
しかも全くの突発で爆発的なブームが来る玩具よりもどれが売れるか予測しやすく
規模は小さいけれどそれが年に何回もやってくる。更にTVと連動していないから即捨て値にはならない。
玩具のカテゴリーに属しているから仕入れられるし扱わない手は無かったはずだ。

かさばるゲーム在庫。そして抱き合わせ。

ファミコンを入れれば売れる。そんな時代もあった。
だが、文化は必ず進化する。前に出たアレより面白い物を、斬新な物を、「売れる商品」をメーカーは作り続けた。
ブームなので一山当てようと他業種からの参入者も多く年々タイトルは増えていく。
無作為に買っていた客側も情報がわかってきたから面白い物しか買わなくなる。
そしておもちゃ屋には確実に売れないゲームが残りはじめて来た。


そこでおもちゃ屋は在庫を一掃する作戦に出た。
抱き合わせ販売だ。
ドラクエはありますが単品では売りません。このソフトとセットになります。」
4本くらいのセットを買わされたような悪質な事例もあった。
スカイデストロイヤーとかスクーンとかいっきとかセットに…*4


ある店舗がやった事を参考に始めたのかどうかはわからないが
全国で抱き合わせの報告があり「世代共通の認識」となっているので
特定の店舗だけが悪いという訳でもなさそうだ。


現在は駅の周りに大型の量販店がゴロゴロしているような状況でもなかったので
こういった小売のおもちゃ屋がゲーム販路のかなりの役割を担っていた時代だった。
こうした抱き合わせで上手く売りきった店はかなり儲かった。


おもちゃ屋の原価の話

これだけだと「おもちゃ屋ボロ儲け」みたいに見えるので一応補足。
おもちゃ屋で扱うブームに全く関係ない*5玩具の卸値は安い物で定価の4割くらいだったがゲームは8割超え
元々多店舗経営しているような店では無く個人経営の少ししか売れない店ではそれくらいの値段で入る。
この値段でもお客様アイで見るとぼったくりのけしからん価格に見えるかもしれないが
仕入れと直接の人件費だけでなく経理や在庫調整等の裏方の費用も捻出するために利益を出さなければやっていけない。
必ず売れるような業種でなければ損失補填も出来ない程の利益しか出せないのではお話にならない。
8割はかなり利益にならない部類だと思う。在庫が余った時の計算をすればすぐにわかるはず。


任天堂のロイヤリティー高過ぎなんじゃないの?という話もよく聞くけれど
ネットで展開されるロイヤリティー絡みのほとんどは「ただしソースは2ちゃんねる」なので
関係者から聞いた話よりもかなり信憑性のない伝聞を否定派も肯定派も自分に都合がいい箇所だけ千切ってまとめているだけなので
そこら辺には触れないことにする。ただ、8割越えは高いよという話。


前述の問屋のように他の商品を買わないと狙い目の商品が買えないとか
そういったえげつない行為があるので、商売とはおもちゃ屋にとっては
仁義なき物だったのを考慮しなければならないのかもしれない。

大規模店舗とゲーム専門店の台頭

80年代後半に大規模量販店が増えて来た。こういった店が出来る前は商品は皆定価。
ディスカウントなんて言葉はあまり聞かなかった。
大量に入れるから値段安くしてね、という実にわかりやすい作戦。
中小規模の店舗は安く入らないから対抗する術は無かった。


日本中で商店街が無くなって行くような状況は既に昭和40年代から始まっていて
スーパーマーケットvs地元民のような対立が各地であった。
更にそこに家電等のジャンルも参入してきたのでゲームも無関係ではなくなってきた。
子供もなけなしのお小遣いをはたくなら安い方がいいし親も支出は控えたい。
あえておもちゃ屋で定価のゲームを買う必要性がなくなっていった。


ファミコンからスーパーファミコンへバトンが渡されROMの高騰だとか色々言われていたけれど
任天堂はこの時期ソフトの値上げを食い止めようとはしていなかったように思える。
定価一万円を超えるソフトが光栄以外でも登場してきたので冒険はできないし
はっきり言って子供のおもちゃという値段ではなかった。
そんな状況でゲーム専門店の中古が人気を集める事になる(後述する)。


ゲーム専門店はフランチャイズ制で全国に次々と出店していった。
売買の価格は本部が通達してくるので勘に頼って大損をするリスクはなく
ゲームも本部が一括して入荷するので値段的にも本数的にも有利。
フランチャイズの料金が幾らかはわからないけれど、個人経営のおもちゃ屋では
手にする事が難しい情報と数的な優位があった。


政府の方針で大規模店の出店は規制されてはいたけれど
90年代に緩和されて…どこかに専門で研究している人がいてちゃんとしたソースも
あるだろうけど調べきれないので割愛。大店立地法とかまちづくり3法とかそこら辺?
ここら辺全く専門外なので。

任天堂独裁のへの隷属。任天堂エンタテインメントショップ

話は戻ってゲームといえばテレビゲームを指すようになり、その代名詞であるファミコンの後継機
スーパーファミコンも好調に売れて任天堂の長い独占支配が続く91年頃。
黄金のマリオ像が町のおもちゃ屋に次々に建てられていった。
任天堂エンタテインメントショップだ。


詳細はわからないが任天堂と契約を結び公認の店舗となることで任天堂商品が
優先的な入荷
するような話だったようだ。任天堂以外の商品も置いていたので
特約店ではないのかもしれないし、おもちゃ屋側がこっそり売っていたのかもしれない。
さらに契約後に一定数の任天堂の商品を売ればそれに応じたキャッシュバック付き*6


もちろん便宜を図ってくれるのなら入った方がいいけれど
このフランチャイズのようなシステムに加わるためには一つ大きな条件があった。
条件は「加入時に店舗改装費用諸々含めて300万を任天堂に納める」事。


今思い出しても、柱や什器で300万円が妥当と言えそうな額ではなかったと思う。
何を見てそう認識したのかはわからないが
「ゲームはメーカーに返品可能」と思い込んでいる人がネットでも多いようだが
返品なんてシステムがあるのは本屋位。ゲームは買ったら返品できない。だからワゴンがある。

任天堂エンタテイメントショップにも勿論そんな夢のような制度は無い。
売上が芳しくなかったのかキャッシュバックの額も年々減っていき最後には無くなった。
はっきり言って上納金以外の何物でもない。


「入れば入荷数を増やす」ではなく「入らないと商品が入荷し辛くなるよ」という話に
なっている場合もあるので、その辺りははっきりしない。
当時のおもちゃ屋を経営していた人間がPCをいじって情報を発信するような
世代ではないのでその辺りの情報はあまり聞かないからだ。


これからもゲームを扱うなら覇者である任天堂と協力する方がいい。
300万の話も当時は知らなかったけれど独自でやっている個人の店舗が
続々と任天堂の傘の下に入っていく様はなんとなく違和感があった。
大規模店舗とゲーム店の台頭で全く優位点が無くなってしまったのも
加入を後押しした事情だったのかもしれない。


その後、一部店舗の要だった抱き合わせ販売も92年には
ドラクエIVの抱き合わせが違法であるとの判決(藤田屋事件)が下る。

御器谷法律事務所ホームページ・独禁法/不公正な取引方法−抱き合わせ販売
http://www.mikiya.gr.jp/Tie-in.html

ゲームが不振なら本業の玩具を売ればいいのかといえば
この時点では量販店がおもちゃもばっちりカバーしている状況。
勿論値段はおもちゃ屋より断然安かった。

入荷数についての補足

「入荷を増やす」について。
任天堂は元々子供向け玩具という事を意識していたメーカーで
ターゲットが小学生向けに作ってあるようなゲームがかなり多い。*7
当然クリスマス商戦での子供のシェアは圧倒的な物があり
迂闊な親御さんがクリスマス当日にやってきたりするのだが
はっきり言って早さが足りない。任天堂の商品は一月前に予約して
確実に在庫を抑えておかなければ最悪一月待ちになる。
前々から言われている事だが任天堂の初回出荷分はかなり少な目
しかもカートリッジは製造に時間がかかるとかで中々入ってこない。


用語は忘れたけれど発注をする段階で初回の「納品7%」とかの数字が
書いてあったりする。その数字は何かと言えばそのまま数字の通り
100本頼んでも発売日には7本しか入れませんという事。
任天堂のソフトはこのように入荷の制限が他のメーカーに比べて
相当厳しい事になっているので当日来ても買える見込みはゼロなのだ。


エンタテイメントショップに入ればその数字を増やしてくれたかもしれないけれど
量販店は元々大量仕入れなので量的な便宜ははなから図られているだろうから、
割を食うのはゲームショップだけという構図になっている。

悪いのは任天堂

エンタテインメントショップの話等を見ると任天堂が悪の組織に見えるかもしれないけれど
おもちゃ屋は確かにあのシステムは酷かったとは思っているかもしれないが
任天堂にだけ憎しみをもっているかといえばそうでもないだろう。


この後のSCEの殿様ぶりも酷いし問屋も悪質だし量販店も容赦ないし
安い方で買うのは市場原理だとは言え町の人間が量販店で買って
おもちゃ屋無くなってしまうんですか。残念です。」とか言われてもムッとするだけだろうし。


町の飲食店なら多少の幅はあっても毎日客は来るのでやっていけばいい。
経営について相当熱心に情報収集をしなくても生きていく事だけならできる。
だが、もうおもちゃ屋はそういった町の〜という経営ではやっていけなくなっていた。
多店舗経営でもしていなければ資金面で追い付かないし
ある程度ゲームについて造詣のある人物でも売上の予想をするのは難しい。
大規模連合を組んで対抗しようという動きも無かったようだし情報の入る先がない。
時代の流れではあるけれど個人経営の町のおもちゃ屋に何ができるのか。
00年代に残った数少ないおもちゃ屋を覗いて見てもゲームは完全に浮いているというか
おもちゃ屋のドル箱からお荷物でしか無くなっていたようにみえた。


それにしても地元のおもちゃ屋廃業というのはそういった時代の流れであるというのを省くと
一端はゲームのせいだというのはゲーム好きな人間としてはかなり重い。
地域の子供に残してやりたい店ではあるけれど。


最近は残った店で新作買ってる。


10分もかからない話で大雑把に書くつもりがこんなになったのでゲーム屋の方はいつか書く。

*1:正確にはゲーム&ウォッチ

*2:正直ファミコン登場より前の事は子供過ぎたし入り浸っていなかったのであまり覚えていない

*3:結局売れた気配は無かったけれど

*4:この時期のゲームは微妙な奴でも皆好きなんだけど

*5:木でできた玩具とか

*6:売り上げに応じてその額が増えたかも。そこは自信なし

*7:64での冬の時代を経てポケモンが出てからはさらにその思想を強固にしているようにみえる